プロフィール

兵頭 和人 (Hyoudou Kazuhito)

役職:株式会社知能機械研究所 代表取締役
神奈川工科大学 教授

神奈川工科大学では2015年の厚木市政60周年記念事業の一環である
等身大ロボット「ロボコロ」の設計・開発
同校は2013年の創立50周年記念事業として、
同校の研究成果を実用化し製品化することを目的とした
先進技術研究所を設立
ロボコロの設計に携わった先進技術研究所
パートナーロボットプロジェクト研究室は等身大ロボット開発
実用化を目標に2015年3月に株式会社知能機械研究所を起業

知識+α=知恵

神奈川工科大学で講義を行っている兵頭氏。

「この大学で会ったのは何かの縁だから、子供たちにはここで学んだ事を糧に飯が食えるようになってほしい。」

その為には教科書に書いてあることを覚えて満足するのではなく、「なぜそれを覚えるのか」という疑問を持ち、改善する意識を持つ事が必要。

書いてある事や言われた事だけしかできないと、ロボットを創る事は難しい。ロボットは「王道」と言われるものがなく、ロボットによって構造が全く異なる。

その為、昨日覚えたことやできていた事が、今日全く通じなくなるなんて事はよくある。

こういう時に応用力がないと挫折する事が多く、ロボットを創る事に苦痛に感じてしまう。

兵頭氏は講義を行う中で子供たちに3つの事を伝える。

「記憶が主体の勉強法を忘れてくれ」
「結果そのものより、過程を大事にしてほしい」
「失敗から学修することも多い」

学校のテストや受験では答えを暗記をすれば良い点を取れることが多いが、これだと「答え」がどういう過程・理由で出されたのかがわからない。

そのため、同じ問題にしか答えが出せなくなる。

「過程」を重視すると失敗が多くなることもあるが、失敗から学ぶことも多いので、未開拓な部分が多いロボット分野で仕事をしていく人には、「結果」よりも「過程」を大事にして「知恵」を養ってほしい。

「知恵」を養う事で、これからロボット分野で活躍する生徒や企業が、日本の経済を支えていくと考えている。

ロボット×人×ペット

「亀」をモチーフに開発したロボット「EXOS TURTLE」――RaspberryPiで取り込んだカメラなどのセンサーを利用して行動する。

スマートフォンから手動で操作も可能だが、基本的に自動で動くようになっており、人が目の前に来るとセンサーが反応して手を上げたり、搭載したカメラが撮影した映像をスマートフォンに送信したりする。

外出先でもスマートフォンを利用して動かす事ができる為、子供やペットの様子を確認したり相手をしたりする事もできるので、家庭内で幅広く利用することができる。

また他にも企業での監視防犯目的として全方向に動ける車両型ロボット「EXOS ROVER」も開発している。

コントローラーは「EXOS TURTLE」と同じ仕組みで簡単操作。4輪独立駆動による、超進地旋回や並行移動など多彩な動きができるので、自律タイプ制御プログラムのしがいのあるロボットキット。

速度調整・向きは4輪で完全に独立して調整でき、標準では「EXOS TURTLE」と同様に、ETCBに駆動プログラムがインストールされおり、RaspberryPiはブラウザからの操縦命令の受信とカメラ画像の送信を行う。

また「EXOS ROVER」は前進・後退・旋回などの動作ができる事に加えて360°確認できる高精度のカメラを搭載しており、空間全体を捉えることが可能であり、重箱のように基盤やセンサーを積み重ねることができる為、後から新しい機能を追加することも可能。

EXOS TURTLE」と「EXOS ROVER」は人型ロボットなどの大きく難しい構造を持つロボットの創り方を学ぶ前に、試作機として構造を学ぶことに適している。

いきなり大きく難しい構造を持つロボットを創ると理解できない事が多くある為、「EXOS TURTLE」と「EXOS ROVER」のように小さな簡単なロボットから少しずつ創る事で、大きく難しい構造を持つロボットを創る事ができると考えている。

気持ちが折れない理由

「好きじゃないとできない。」

大学入学者の大半は「人型」ロボットを創りたいという想いが強いが、大学4年生になる頃には「人型」にこだわる生徒が数名になる。

大学4年生になっても「人型」を創ろうとする生徒は一貫して、「ロボットを創ることがなによりも好き」だという。

人型ロボットは機械の仕組みだけ知っていても創る事は難しい。人間の筋肉や骨の動きなどの仕組みを知ることも必要になる。

例えば、腕を曲げる動作する場合、体の中では「筋肉が縮む」と「腱が伸びる」が起こっている。この腕を曲げる動作をロボットにもさせる場合、「筋肉が縮む」と「腱が伸びる」が起こっている事を理解していないと、ロボットで腕を曲げる動作を行うことは難しい。

このように、様々な知識を得て一つ一つの知識を混ぜる事で、新しい発想や技術を生み出す事ができる。

兵頭氏は常に新しい事を学ぶようにしており、学んだ事を活かして、新しいロボットを創ったり、生徒に教えることが心から楽しみだという。

好きな事が見つからないという人には、まずは色々な事に挑戦して、知識と経験を得てほしい。

様々な経験をする事で、好きな事が見つかると信じている。

ロボットが聖火ランナーに

2020年の東京オリンピックの聖火ランナーを二足歩行ロボット(人型)に務めさせたい。

海外では車輪型のロボットが競技会などに登場した実績はあるが、オリンピックという大きな舞台で、2本足で走って聖火ランナーを務めたロボットはいない。

二足歩行ロボットが聖火ランナーを務める事ができれば、日本の技術力を世界にアピールする事ができる。

兵頭氏は日本の技術力を世界にアピールし、研究のプラットフォームを創りたいという。

2013年に二足歩行ロボットを製作した兵頭氏。

主に大学4年生の教え子3人で昼夜問わず製作を行い、3か月半という非常に短い期間で創った。

最初は屈伸だけしかできなかったが、少しずつ改良を重ねて、斜面やカーブでも歩行が可能な一号機が完成した。

二足歩行ロボットの開発は難しい領域な為、開発する企業は少ないが、2020年の東京オリンピックの聖火ランナーを二足歩行ロボットが務める事ができれば、二足歩行ロボットを開発する企業が増え、アナタの横でロボットが歩いている未来が近くなる。