プロフィール

株式会社イクシスリサーチ
代表取締役 山崎 文敬 (Yamasaki Fuminori)

1994年 早稲田大学理工学部機械工学科 入学
1998年 早稲田大学大学院理工学研究科機械工学専攻修士課程 入学
2000年 大阪大学大学院工学研究科知能・機能創生工学専攻博士課程 入学
2000~2002年 科学技術振興事業団(現、科学技術振興機構)
ERATO北野共生システムプロジェクトへ学生技術員として参画し、
ヒューマノイドロボット「PINO」を開発

知的な”何か”を創る会社

「iXs」 とはintelligent X(=変数の意味) systemの造語であり、「知的な“何か”を創る会社」だという。

「iXs Research」では社員10名程で業務の役割を分担して行っており、社長である山崎氏は社長業の傍ら営業兼雑用も行っており社員との距離が近い。

山崎氏は社員を採用する際に「ロボット業界経験者」は条件にしておらず、今いる社員の多くは元々ロボットに関係の無い職業からの転職者である。

山崎氏は小さい頃からモノ作りが好きで、ラジコンなどを造っていたが、ガンダムや鉄腕アトムといったロボットアニメには「興味が無かった」。

山崎氏がロボットに関わるようになったのは大学生の頃、マイクロマウスを研究するサークルに入った事がきっかけ。

サークルの活動の中でロボット業界に詳しい知人に出会い、ロボカップなどに参加をする機会が増えた。

この頃、AIBO等のロボットが社会に認知され始め、ロボットブームが起こっており、愛知万博では展示されたロボット開発に携わっていた。

愛知万博では将来的には必要でも、今は必要無いのではないかと思えるシーズ思考のロボットが多く、事実、ロボットブームが終わった。

ブームが終わった後、「いますぐ確実に役立つ身近なロボット」を創り、技術で人に貢献する為、「iXs Research」でロボット事業を進めた。

山崎氏は元々ロボットアニメに興味が無かったため、ロボットに対する変な固定概念が無く、実用的なロボットの開発に進めたという。

現在、「iXs Research」に入社した社員は半年もいれば、ロボットに関する知識や技術が
ある程度身につくほどの数のロボットを毎年開発している。そのため、採用する社員はロボットに携わっていた事が無くても、技術や人間性を重視して採用し、一緒に仕事をしている。

山崎氏はいつも社員に言っている言葉がある。「ロボットを作るだけならだれでもできる、作っていいかを考えよう」

創ろうとしているロボットが、今必要なモノかを考え、使えると判断できるモノを創る。

その為には人型ロボットが最終系だという概念はない方がいい。

人に代わるモノではなく、人の助けになるロボットを創っていく。

【二人からのスタート】

「iXs Research」創業当時、山崎氏は大学生だった。いわゆる学生起業である。

今でこそ学生起業は珍しくないが、「iXs Research」創業時、学生起業をするという事はとても珍しかった。

知人と二人でスタートしたという「iXs Research」は、学業の片手間に起業したこともあり、起業して数年は事業に専念していなかったが、大学の先生やAI系の研究所から受注があり、大学の支援なしでも事業を進めることができた。

2002年頃、大手企業ではロボットの開発に力を入れていた。

その多くが具体的な目的は無く、ロボットの可能性信じてロボットの開発に力を入れていた為、ロボットに関連する企業は、仕事に困ることは無かった。

愛知万博後のロボットブーム終焉後、メンテナンスロボットを受注しようと活動を開始し、展示会などに出展したが、メンテナンスロボットに関する開発実績が無い為、なかなか仕事に繋がる話にはならなかった。

そんな折、HPも無いような会社から受注があった。
話を聞くと現場で活躍できるメンテナンスロボットを創ってほしいとの事。

他のロボットメーカーに依頼したが、他社はボリュームを求めてくるので、一つや二つといった少数の受注は受け付けてくれず、たらい回しにされた結果、「iXs Research」に行きついたとのこと。

山崎氏はその話を聞き、受注を快諾して納品した。

この一つの実績が基で仕事の依頼が予想以上に舞い込んだ。
そんな中、山崎氏は社内でメンテナンスロボットの開発に専念する事を宣言。

【メンテナンスロボット】

メンテナンスロボットについて話す前にレスキューロボットについて話しておきたい。

レスキューロボットは地震や津波といった災害が発生した際に役立つ為、社会的ニーズがとても高い。

東北や熊本で起こった震災の際にもロボットは現場で活躍している。

しかしながら、レスキューロボットは消防庁などの限られた顧客にしか需要が無く、大規模災害も数年に数回ほどしか起こらない為、活躍する場面が少ない。

そのため、レスキューロボットは改良が進まない事が多く、改良が進まないという事は、ロボット技術が向上しないだけでなく、ロボットを使う人材が育たなくなる。

そこで山崎氏はレスキューロボットに容易に転換できるメンテナンスロボットを開発することにした。

レスキューロボットは災害時しか使わないが、メンテナンスロボットはモノがあれば、常に必要。

その結果、レスキューもメンテナンスもできるロボットに行きついた。

なお、ロボットを創ったは良いが、現場に導入しても導入場所で破損する、障害物に当たる等して戻ってこないことが多い。

そのため、止まらずに戻って来られるロボットしか創らないという。

現場を知らずしてモノづくりはできない

山崎氏はロボットを創る上で現場に行く事を徹底している。

顧客からの要望を素直に受け入れてロボットを創る事は可能だが、実際に現場に行くと、要望ではない部分に本当の問題があり、その問題を改善する事が顧客が本当に必要としているモノであったりする。

実際、現場に行く事で現場の仕組みを知る事ができ、顧客の要望以上のモノが提供できている。

ロボットを作るだけでなく、業務の根本的な改善に繋がっている。

また、山崎氏が提供するロボットは「人に代わるモノ」ではなく、「人の助けになるモノ」である為、ユーザーに浸透しやすい。

「人に代わるモノ」は人から仕事を奪う事を想像させる為、ユーザーの中で反対する人も出てくるが、「人の助けになるモノ」はユーザーが安全に楽して仕事ができるツールになる為、反対する人は出てこない。

いきなりロボットが人の代わりに働く社会が来たら、人はすぐに受け入れることができない。

「人の助けになるモノ」として少しずつユーザーにロボットが受け入れられれば、将来的に「人に代わるモノ」が社会で受け入れられ、より安全な社会を創る事も可能だと考えている。

2002年頃大手企業がロボットに力を入れていた頃は、メーカーから広まったブームである為、シーズ思考が強かったが、2016年の今は消費者からブームが広まっている為、ニーズ思考のブームになりつつある。

山崎氏はニーズ思考の今だからこそ「社会にロボットを定着させる事が必要」だという。
もしこの機会にロボットはダメだと認知されてしまうと、ロボットが社会で活躍できる時期が数年単位で遅れてしまう。

その為、まずはしっかりニーズに対応できる、ユーザーに受け入れられるロボットを、ユーザーの視点で社会に提供していき、このブームを根付かせていきたい。

これからブームに乗ってロボットに携わる方には、現場を知り、ユーザーの視点を知り、創って良いか考えて、ロボットに携わってくれる事を心から願っている。