プロフィール

酒井 拓(Sakai Taku)氏
ユニロボット株式会社 代表取締役

経歴
慶応義塾大学卒業後、住友商事で勤務。
「人工知能」「ロボット」をテーマとしたユニロボット株式会社を創業し、現在代表取締役
2015年10月
アジア最大級のオープンイノベーションの式典「ILS」で500社のベンチャー企業の中から、グローバルイノベーションの分野でTOP10企業に選出
2016年3月
富士通アクセラレータプログラムのピッチ大会で最優秀賞を受賞
2016年10月
アジア最大級のオープンイノベーションの式典「ILS」で、人気TOP100企業に選出
2016年11月
Wantedly Award 2016で、 Hacker賞を受賞

マンハッタンと東京でのゴミュニケーション

「テクノロジーで社会貢献したい」という強い想いを持ち続けている酒井氏。

今では「unibo(ユニボ)」を製作して、想いを形にしているが、
初めからロボットを創りたいと思ったわけではなかった。

酒井氏は2015年まで総合商社でサラリーマンをしており、
学生時代含め9年間、貧富の差が大きいアメリカのニューヨークのに住んでいた。

この頃には既に「テクノロジーで社会貢献したい」
という想いを持っていたが、なにが社会に刺さるかわかなかった。

そこでまず酒井氏は、
マンハッタンでボランティア活動としてゴミ拾いを始めた。

マンハッタンはロックフェラーセンターなどの観光地の通りは綺麗だが、
一本裏の道に行くとゴミが散乱しており、予想以上に汚かった。

ゴミ拾いは日本人5人から始まり、次々と賛同する人の輪が広がり、
最終的に20~30人以上定期的に集まる規模になった。

アメリカではボランティア活動をすることは小さい頃から推奨されており、
大学の入試でボランティア活動の有無について質問があるほどだという。

ボランティア活動を続けているとアメリカの日系メディアに取り上げられ、
反響が大きくなり、その勢いで帰国後も、東京でもゴミ拾いボランティア活動を開始した。
会話をしながらゴミ拾い活動をするということで「ゴミュニケーション」と名付けたプロジェクトだ。

東京では、当時人気だったミクシーでコミュニティを作り、
参加者を募ったところ、定期的に30人以上が集まり、
回を重ねるごとに参加者が多くなり、多い時は70人~80人が集まった

代々木公園~原宿・表参道周辺を中心にゴミ拾いボランティア活動を行い、
サンタクロースの恰好をしてゴミ拾いをするサンタクロースクリーンアップや、
シャボン玉ゴミ拾い、季節に応じたスイカ割りゴミ拾い、恵方巻ゴミ拾いなど、
これまでにないアイディアを駆使し、ゴミ拾いを進化した新しい週末の過ごし方を提案してきた。

こうしたボランティアに新しい付加価値を付けた事により、
20代~30代の参加者が増え、交流の場としてコミュニケーションが活発になり、
友達の輪が広がる新しい場づくりとして成功モデルを確立することができた。

そして、こうしたボランティアの輪が広がり、大きな挑戦にもチャレンジをした。

それは、世界最大人数の二人三脚で50メートルを歩く種目、
及び世界最大ペア数での二人三脚レースの種目のいずれも成功させ、
2種目にわたりギネス記録更新に挑戦し、見事達成した。

こうしたボランティア活動や多数のソーシャルアクションのイベントを開催した経験も糧に、
2014年親族で会社を設立、震災もあり益々深刻化する人手不足や急速に進む高齢化社会を背景に
「テクノロジーの力で大きく社会貢献するためには何が求められているか」を真剣に考え、
親族でロボットの研究開発を始めた。

音声の時代

高齢化社会に伴い、パソコンの需要が減少していく脱キーボードの時代に突入しつつあり、
音声と人工知能の組み合わせで機械をコントロールする、「AI」が身近にある未来が近いという。

酒井氏は、個々のユーザーの趣味趣向を会話を通じて学習することができる
パートナーロボットを目指し、uniboの開発を行っている。

欧米に比べて日本の家庭は部屋が狭い為、ロボットが移動する必要性が低く、
ロボットを持ち運ぶ概念もまだ社会の認知としては低い為、
uniboは卓上型にしている。

またuniboは、表情や声の表現力を広げるため、
液晶ディスプレイを採用し、ディープラーニング(深層学習)を元に日常会話を学習し、
人とロボットが自然な会話ができる世界観を目指している。

そしてuniboの特徴として「人型」である事が挙げられる。

欧米などの他国では「ロボット=人型」という強い概念は無いが、
日本ではドラえもんや鉄腕アトムなどのアニメの影響から、
「ロボット=人型」という概念が広く定着している。

その為、日本人には「人型」の方が受け入れられやすいと考えた
「人型」である事でストレス無くuniboに話かける事ができ、
人とロボットが音声でやりとりできる日常を創る事ができる。

毎日がジェットコースター

uniboは国内で初めて個性を学習するロボットである。

社会に「初めて」を提供するという事は、
社会的に期待と責任をもらっているという事。

酒井氏はロボットを創ると決めた時から使命感を感じ、
生きるか死ぬかの「覚悟」を持って仕事をしている。

休みが取れない事はもちろん、色々な場所に足を運び、
新しい人に出会う為、良い事も悪い事もジェットコースターに乗っているように、
毎日目まぐるしく進んでいるという。

起業時は実績が無い為、まともに話も聞いてくれない企業が多く、
苦労の連続だったが、uniboの開発が進むにつれ、
大手上場会社の役員らとの面談の機会が増え、
TV・新聞・雑誌に取り上げて頂ける機会に恵まれるようになったりと、
起業時に見向きもしてくれなかった企業や人たちの見方が変わった。

今ではuniboを販売・購入したいという反響が多く届いており、
三越伊勢丹での販売をはじめ、今後一般家庭だけでなく、
総合病院やホテル、商業施設等での導入が検討されている。

ジェットコースターに乗っているような毎日を送っている
酒井氏を支えるモチベーションは事業をともに創っている社員ら仲間、
パートナー企業と夢を追いかけたいという強い思い。そして、
創業者として孤独に向き合う場面があるときは、読書によって、
モチベーションを支えているという。

松下幸之助やスティーブ・ジョブズといった超一流と言われている先駆者の
言葉を綴った本やフレーズを何度も読み返し、読んだ内容を自身に投げかけ、
自身を毎日奮い立たせている。

中でも下記のスティーブ・ジョブズの言葉を意識しているという。

「私は毎朝、鏡に向かって『もし今日が自分の最後の日だとすれば、
今日しようと思っていることが、本当にしたいことだろうか?』と
自問するようにしている。もしその答えが「ノー」だという日が
何日も何日も続くようであれば、何かを変える必要があると思うわけだ。」

まだ「休む」事ができない酒井は、まずは2017年3月の
uniboのサービスを提供する事を目標にモチベーションを高め続けて、
進んで行くという。

未来のコンシェルジュ

unibo は2016年9月14日から先行予約販売受付をスタートし、
2017年3月から全国販売を開始する。

unibo公式サイトと三越伊勢丹の店頭で予約を受け付ける。

uniboは身長32cmの卓上型ロボット。
本体のハードウェアは法人向けと一般向けで違いはないが、
主に問合せや技術サービス面で差別化を図っている。
※OSはAndroid OS

uniboの顔となる部分はタッチパネル式の液晶ディスプレイになっているが、
音声のやり取りを主に考えている為、ディスプレイに触れて操作する事は少ない。

ディスプレイには常時、目を表示させているが、撮影した写真や
通話中には相手の顔を表示させる事も可能になっている。

また、赤外線学習リモコンを搭載しているので、
テレビやエアコンのリモコンの代わりとして活用する事も可能。

なお、通信機能は無線LANだけではなく、有線LANの端子も利用する事ができる。

会話はインターネットを経由してクラウドで処理しているので、
インターネットの接続環境は原則として必要になる。

本体価格は99,800円(税込 107,784円)、
unibo基本パックの月額利用料は5,000円(税込 5,400円)。

基本パックはクラウド利用料、人工知能・コンテンツ更新料、
バージョンアップ等の代金が含まれる。

現状、uniboを利用して社会貢献をしていくが、
ゆくゆくはuniboという形にこだわらずに様々な機器に
自社で開発したAIが導入され、様々な機器がコンシュルジェのように
手のかゆいところまで利用者の日常をサポートできるようにしたい。

その為に、AIやロボットなどの新しい分野のテクノロジーに携わる技術者が
もっと活躍できる環境を創りたいという。

夢を持った技術者が素直な気持ちで、気持ちよく色々な経験ができ、
活躍できる環境を創る為に、先頭に立って事業を進めていく。

これからAIやロボットに携わる技術者には、
「自分の道を信じてほしい」それが結果、成功すると信じている。