プロフィール

佐々木 陽(Sasaki Akira)
株式会社GClue 代表取締役社長

◼︎経歴
宮城県立仙台第二高等学校卒、会津大学卒。
1999年よりモバイルコンテンツの開発に着手。
2001年に株式会社GClueを設立し代表取締役に就任。
宇都宮大学非常勤講師、株式会社FaBo代表取締役も兼任。

理論を学ぶだけではなく、現実世界で動かしたい

日本のAI技術者の育成環境は厳しいものがある。
海外ではA技術者が自動運転システムを開発し、自分の車で実験する人々がいる一方で、日本では多くの規制があり、同じ事を実現することは出来ない。
世界的にAI技術者が枯渇する現代、日本のAI技術者の量と質の低下を危惧している佐々木氏。

佐々木氏は日本のAI技術者、エンジニアを増やしたいという志を持ってこれまで活動してきた。
そして、その想いをカタチにしたロボット教材が”ホットドッグ”である。
“ホットドッグ”は、1台で子どもから大人まで学習ができる、経済的でエコなロボット教材である。

このロボット開発の原点は、佐々木氏の少年時代の経験にあった。
佐々木氏は工作でトランジスタラジオを造るなど、モノづくりが好きな少年だった。
中学生になると電子回路に興味を持つが、近くに電子回路が買えるお店がなかったため、電子回路を使ったものづくりが出来なかった経験がある。
大学に入ってからも、論理回路など論理的な勉強が多く、実際にモノを造るといった経験は少なかったという。

ロボット教材開発のきっかけとなったのは、四年前に宇都宮大学で非常勤講師をしている時だった。
当時の教え子から、マイコンや制御の理論を学ぶだけではなく、現実世界で実際に動かしてみたいと相談を受けたのだ。
佐々木氏はその話を聞いた時、自身も学生時代にモノづくりが満足にできなかったことを思い出した。
そして、教え子には同じ経験はさせたくないと思い、ロボットカーを作製したのがロボット教材開発の始まりである。

0からの挑戦“ホットドッグ”の製品開発

ロボット教材の“ホットドッグ(HotDog)”は、子どもから大人までユーザーのプログラミング知識のレベルに応じて学習ができる車型のロボット教材だ。
また、学校の講義でも使われているため、講師が簡単に教えられるように工夫されている。
例えば子供であれば、ベーシックのプログラム言語で、10行くらいのプログラムを書けばライントレースが行える。
大学生や専門学生であれば、プログラムを組み合わせて、少し複雑なトレーニングができる。
学習者のレベルに合わせて、教材に使用するプログラムを変えることで子どもから大人まで同じ教材を使って学習することができるのだ。

このホットドッグを佐々木氏と共に開発している、プロダクトチームのエンジニアである穂積氏と、高梨氏にもお話を伺うことができた。
穂積氏は、これまで培ってきた製造業での経験と知識と勘を活かし、“ホットドッグ”の筐体開発を推進してきた。

しかしここまでの道のりは、決して順風満帆ではなかったという。
ホットドッグ”の筐体の開発は、正解が分からない中で0から試行錯誤しながら、スマートなカタチに持っていくことを求められる仕事だった。

ホットドッグ”に求められた要求は、誰でも簡単に組み立てられるモノを造ること。
そのために、パーツの数を極限まで減らし、軽量化しながらも強度を保つことを目指す。
品質を向上させるために、展示会場で来場者へのヒアリングを行い、走行テストで得た情報を元に、“ホットドッグ“の品質改善を繰り返した。
苦難の連続ではあったが、最終的に誰もが直観で簡単に作れる製品を実現し、現在の形に辿り着けたと穂積氏は自信を持って話してくれた。

ソフト開発を推進してきた高梨氏は、“ホットドッグ”の制御開発や、次期バージョンのディープラーニング教材の開発をしている。
元々システムエンジニアだった高梨氏は、ハードの事は専門外であり、ソフトとハードの開発を行き来してシステム開発をすることに苦労したという。

現在開発を進めている“ホットドッグ”の次期バージョンでは、ディープラーニングを学習できる機能を追加する予定だ。
そのために車体の先頭に三つのレーザーセンサーを設置し、レーザーセンサー毎に周辺環境の値を一つずつ取得し、認識する必要がある。

しかし、開発を進めて行くうちにレーザーセンサーをそのままチップに接続すると、三つとも同じ物理アドレスになってしまい、どのセンサーにアクセスして値を取得しているのかわからないという問題が起きた。

この問題を解決するため、3つあるセンサーの1つ1つに通電して物理アドレスを変えるという仕様にしてみたが、とても非効率でありソフト開発の限界でもあった。

ソフト開発の限界を知った高梨氏は、佐々木氏へチップ開発での問題解決を依頼し、この問題をチップ開発で解決した。
このチップは通電の順番をずらし、自分が指定した部分に通電するようチップを設定し、タイミングをコントロールすることができる。

高梨氏はこれまで培ってきたソフトの知識だけでなく、ハードの知識も取り入れることで、自身の技術力も向上し、出来ることも増えたと話す。
現在は、次期バージョンに向けてディープラーニング教材の開発に注力している。
とても遣り甲斐を感じ、楽しみながら進めていると高梨氏は話してくれた。

みんなの“つくる想像力の開拓”を支え続けて行きたい

多くの方に“モノづくりへ興味を持つきっかけをつくりたい”と考える佐々木氏に、今後の展望をお聞きした。

現代はITの専門性がどんどん高くなり、仕事が増える一方でエンジニアの不足が深刻な問題となっています。
IT企業ではエンジニアがいないと新しいことが出来ないし、事業も継続できない。
これからの時代、社会全体でエンジニアを育成する社会となり、教育で使う教材も今より分かりやすく、親しみやすいものになっていく必要があります。

そして、ロボット教材に求められるものは、人がモノづくりに興味を持った時に、その人が
「つくりたいイメージをいかに具現化して、動かせるようにするか」
ということが大切になってきます。

“ホットドッグ”は、モノを造りたいと思った時に、誰でも簡単にプロトタイピングとして使え、すぐに動いて試せるという世界観を提供することを大切にしています。
これからも、みんなの“つくる想像力の開拓”を支え続けて行きたい、と考えています。

短時間で沢山失敗するために、実現するための方法論を持つ

佐々木氏より、ロボット研究開発を目指している方へメッセージをいただいた。
「誰でもロボットを造れる時代に突入しました。
だから、みなさんも気軽にチャレンジして欲しい。
ハードウェアを動かすとか造るのは、WEBやアプリを作るのと同じくらいのところまで来ている。

重要なのはオープンソースを活用したり、造ったものをオープンソースにすること。
そして、自分一人では出来ないことをインターネット等のコミュニティで相談して進めて行くこと。
ディープラーニングやロボット制御なども、昔は専門の人が行うという感じではあったが、今では誰でも出来る環境に変わってきた。

また、新しいものを作ろうと思ったら、常に造り続け、手を動かし続け、失敗を沢山しないと成功もしないし、凄いモノまでたどり着くこともできない。
ロボット造りは10回作って1回うまくいったらラッキーみたいな世界なので、いつでも何かを造っていないといけない。
そして、短時間で沢山失敗するためには、実現するための方法論を持つことが一番重要だと思う。

“ホットドッグ”を造る際も、誰かが造り方を伝授してくれるわけではなかったため、自分達で考えた沢山の方法論を試し、試験走行させることでクオリティを上げた。
いかに早く失敗して、次のバージョンを作れるかというのがこの開発ではとても重要だった。
ヒットするかどうかは、失敗の先にしかない。
みなさんも、早く沢山の失敗をし、自分が本当に目指すモノづくりを実現してください。」


ホットドッグ公式サイト  http://hotdog.fabo.io/
株式会社GClue HP  http://www.gclue.com
株式会社FaBo HP  http://www.fabo.io/index.html