【不整地×ロボット】人に代わって作業できるものを作りたい

プロフィール

東北工業大学 
教授 藤田豊己
東北大学工学部機械工学第二学科卒業。
東北大学大学院工学研究科博士課程修了。博士(工学)。
電気通信大学大学院情報システム学研究科助手、カリフォルニア大学バークレー校研究員、EUプロジェクト研究員を経て、現職。
主な研究テーマは、不整地移動ロボットの開発と環境認識、移動ロボットの視覚機能、人間の視覚特性に関する研究。
担当科目は、ロボティクス、制御工学、マルチメディアシステム、プログラミングほか。

タイミングと好奇心

東北工業大学教授・藤田豊己氏。
藤田氏の少年時代はものづくりとは関わりがなく、時々プラモデルの組み立てを行う程度で、本格的に行うラジオの組み立てなどはしたことがなかった。

ロボットに関わるきっかけとなったのは大学4年生の研究室を決める時。
新しく就任した先生が、当時珍しかったロボット関係の研究室を立ち上げたという話を聞いた。
加えて1985 年に開催された、つくば万博の印象が藤田氏の頭に残っており、通っていた機械工学第二学科では、コンピュータの授業はほとんどなく“ロボット”という単語も珍しかったという。
そのため好奇心も相まってロボットの研究室に所属を決めたそうだ。

藤田氏が学生時代に行った研究は、数あるテーマの中で一番面白そうだと選んだ、車輪型の全方向移動ロボット・メッセンジャーロボットの研究だった。
車輪は通常前後にしか移動はできない。
左右に移動する場合は車体自体を曲がりたい方向に大きく旋回する必要がある。
そこで車輪の操縦メカニズムを研究し、前後左右の移動が可能な車輪を開発した。
車軸から少しずらした位置に車輪を設置したことで、すべての車輪の向きを同じ方向に向けることができる。
大学時代藤田氏は、全方向移動ロボットを開発したことにより、ロボットをさらに研究したいという想いが芽生えた。

発展性はどこにあるのか

ロボットに興味を持ち、知識欲が芽生えた藤田氏は大学院へ進学。
大学院では制作した全方向移動ロボットを使用し、障害物の回避動作などについて研究した。
移動ロボットの研究を進めていくうちに、ロボットの魅力にのめり込んでいき、未来の移動ロボットが発展した姿を考えるようになる。
しかし、当時は明確なビジョンを思い描くことができなかった。
藤田氏の中で今後発展していくのはメカニズムではなくシステムではないだろうか、という考えがあったからだ。
全方向に移動するという動作部分はメカニズムであり、ロボットに動く信号を送る部分はシステムである。
動作部分のメカニズムよりも、知能的なシステムに発展性があるのではないかと思い、大学院後期では複数のロボットを同時に動かすためのソフトウェアの研究を始めた。
そして複数台のロボットを人間が管理しやすいように、管理システムを構築。
この管理システムを用いて対象物をロボット二台で持ち上げるという協調動作に対応させ、人間に代わってロボットが協力して作業することを可能とした。

世界を渡り歩く

藤田氏は当初は学生の本分を全うするために勉強を行っていたが、自分が作ったものが動いたときの感動を知ったことにより、ロボットの魅力に惹かれていく。
そして研究を進めていくうちに、また新たな魅力の発見に繋がった。
ロボットの研究が広がれば、システムやメカニズムの可能性も広がり、研究テーマも増えていくことに魅力を感じたのだ。
ロボットが生み出す無限の可能性にチャレンジしていきたいと決心し、藤田氏はロボットの道に進んだ。

藤田氏は大学院を卒業後、電気通信大学大学院情報システム学研究科のヒューマンインターフェース学講座の助手として就職する。
そこで人間の知覚機能の仕組みを調べ、研究成果をロボットや様々なものに応用する研究室に所属。
研究室では目の錯覚も含めた視知覚の研究を主に行っており、藤田氏は視覚研究に携わり始め、その研究に興味を持った。
藤田氏は五感(聴覚・触覚など)についての研究を行っていたが、その中でも視覚が用いる情報の重要度が高いことを知る。
人間は周囲の情報のおよそ80%を視覚から獲得していると言われていたからだ。
視覚に関する様々な研究を進めていた藤田氏は、在外研究プログラムを利用し、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校へ留学。
このプログラムは若手研究者を対象に海外という新しい環境の中で研究に従事し、将来国際的に活躍できる優秀な研究者を育成することを目的として行われるものだ。

留学先では電気通信大学で視覚研究に携わっていたこともあり、錯覚を利用した人間の視覚特性の研究や、眼球運動の視線計測の研究を行った。
人間は物を見ている時、無意識に眼球を絶えず動かしているという特徴がある。
そこで視覚で物を認識している時、人間がどのように目を動かしているかを数値化できれば、ロボットに応用し、物の動きを理解させることができるのではないかと考える。
コンピュータ上で画像処理技術と視線動作を数値化したデータを使用して、人間と同じような特性を示す注視領域の分布を作り出すことができた。
今後はこの技術をロボットに適用させていきたいと考え、藤田氏の研究室で行っている大元のテーマである移動ロボットに組み込むことを想定したビジョンシステムの研究も行っている。

一から作り、新しい技術を見つける

これまで研究はプロジェクトの一つとしてやっていたということもあり、自由に研究開発することができない日々が続いていたが、東北工業大学に来て研究室を持ち、ようやく自由にロボットの研究ができるようになった。
藤田氏の研究室では従来の技術に加え、新しい技術を取り入れて動かし、ロボットを一から開発することを大切にしている。
ロボットを一から作り出すことによって、大変さ・面白さ・楽しさを学生たちに知ってもらうためだ。

毎年藤田氏の研究室が出場している知能ロボットコンテストがある。
このコンテストは、自律的に動作するロボットを開発することで知能ロボットに必要な技術を習得することを目的とした大会だ。
競技用の会場に3色のボールがばらまかれ、ロボットがそれらを探して同じ色のゴールに入れるというシンプルなルールだ。ただし、競技者はロボットに触って操縦することができないため、ロボットは自ら判断して自律的に行動しなければならない。
また、この大会は競技点と審査員店の総合成績で順位が決まる大会であり、審査員点はパフォーマンス性、チャレンジ性、芸術性、スピード感が評価されて与えられる。
この大会で藤田研究室の学生が好成績を収めたのは2年前のことだった。
制作したロボットがボールをすべて色の通りにゴールに入れ、競技点の項目で最高得点を取り、1位を獲得。
しかし審査員点が加わった総合点でこの大会の優勝者が決まる。
競技点とは別に加算される、審査員点があまり獲得できなかった。審査員点は斬新なアイデアがロボットに使われていたり、ロボットが課題を完遂するのに要した時間、ロボットのデザインが良いと加算される。
審査員点が加算された結果、僅差で4位となってしまったが、技術のチャレンジ性を評価され、チャレンジ技術賞というものを受賞することができた。

現在は藤田氏の研究室で一から新しい技術を作り出すだけではなく、長年継続している従来の技術の研究や、不整地移動ロボットの開発、人間の視覚特性に関する研究を行っている。
そこで今回は不整地移動ロボットのご紹介をさせて頂きたい。

このロボットにしかない動きを目指す

不整地移動ロボットというのは多く存在する。
数あるロボットの中で、不整地移動には特化していても、移動しながら作業できるロボットは見かけない。
ならば自分たちで移動しつつも作業ができるロボットを開発しようと思い立つ。
従来の不整地移動ロボットの性能は急な斜面を登る、大きな溝を乗り越えるなどの荒地である不整地移動に加え、物を持つことを可能とした4本の手足を取り付けたクローラ型不整地移動ロボットを開発した。
クローラ型ロボットとはキャタピラが取り付けられたロボットのことである。
またキャタピラは別名クローラとも呼ばれている。

クローラで大きな段差や溝を乗り越える際に脚を前方に伸ばして反対の岸に接地し、支えることができるため、従来のクローラ型不整地移動ロボットよりも大きな溝も乗り越えることができる。
さらにロボットハンドとしての役割もあり、2本の脚で物を移動させたり、掴むこともできる。

そして改良版として脚を2本増やし、6脚にしたクローラ型不整地移動ロボットも開発した。
6脚となり、脚だけでの走行を可能とし、4脚ではできなかった物を掴みながら運ぶことができ、脚を増やすことによって、多彩な動きを可能とした。

この不整地移動ロボットを開発する過程で、一番の課題となったのは重量だった。
クローラは重いため、胴体も重くなる。
クローラを使わずに脚のみの走行は4脚でも可能だが、問題があった。
機体が重く、脚で走行した場合不安定な状態のためロボットが破損してしまう可能性があるのだ。
そのため改良版で脚を2本増やし、6脚にすることで歩行はスムーズに出来るようになったが、やはり重量が増えてしまう。
部品の取捨選択をすることで軽量化を図ったが、重量を優先してしまうと今度は強度面の問題が浮上する。
強度と重量の兼ね合いが困難を極めたが、不必要な部分やフレームの撤去や軽量なものへと交換を行うことにより、重量を10kgまで抑えることに成功した。
今後の課題として現在開発している移動ロボットにできない動きを見つけ、様々な形状の不整地に対して移動できるようにしていきたいと話してくれた。ロボットの形態に応じて、使う場面、行う作業が変わり、考える幅も広がっていく。
研究することはまだまだ多く、先は長いと藤田氏は話してくれた。

人に代わって

藤田氏は人間に代わって作業することができる様々なロボットを開発するために日々研究している。
作り上げるために新たな技術を研究していき、一つでも多くの機能を実現するために、条件を絞り込みながら一つずつ着実に積み上げていきたいと話してくれた。
そしてさらにロボット技術を進歩させ、人に代わって作業を行うロボットを開発できる技術者を社会に輩出していきたいそうだ。
若者がロボットに興味を持ち、技術を身につけ、研究開発に携われば技術は発展していくだろうと藤田氏は語っている。

最後にこれからロボット開発を目指す方に藤田氏からメッセージを頂いた。

「ロボットの専門知識も必要ですが、まずは身体を動かして試行錯誤しながらものづくりに取り組んでいくことが大事です。
何事にも積極的にチャレンジする姿勢を持ち,根気強く行動して欲しいと思います。
そして,やみくもに手足を動かすのではなく,目的や原理などを考えながら行うことで効率的に進めることができます。
そのときに論理的な考え方や専門知識が必要となり,日頃の勉強の成果が活かされることになります。
日々の努力を継続し,積み重ねていくようにしてください。」

日々の努力を継続していき、チャレンジ精神を持つことで、必ず役に立つ時が訪れる。
自分の知識と経験が活かされるチャンスきた時のために、日々の努力を怠らないことが大切だと、藤田氏は教えてくれた。

藤田研究室URL:http://www.eis.tohtech.ac.jp/study/labs/fujita.html

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紹介 さくまみさき

楽しく、驚く記事であり、製作者の言葉が、一人でも多くの人の頭の片隅に残るような記事を書いていきます。

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