プロフィール

株式会社OLPASO
代表取締役 佐藤 満

◇経歴
東北工業大学卒業後、数年のフリーターを経て株式会社システムデザインに入社、当時出始めたマイコンを使用した自動機開発に携わる。
その後、別の会社で採血管準備装置の開発を担当し、並行して海外販売のノウハウを取得する。
2009年株式会社OLPASO(オルパソ)を設立。

グローバルへ参入

株式会社OLPASOは医療機器を取扱っている企業であり、海外の展示会で多く出店している。
世界を舞台に事業を行なっているOLPASOの代理店はインド、トルコ、サウジアラビア、スペイン、ベトナム、韓国、台湾、中国の8ヶ国に点在しており、仙台では珍しいグローバルな会社だ。

主力商品に採血管準備装置という、採血管を準備してくれる装置がある。
採血管は検査の種類によって、管の種類やラベルに表記する内容が変わってくるため、一人一人違うものが使用される。
採血管を準備する時間削減のために、機械が採血管の判別やラベリングを自動で行ってくれることにより、採血がスムーズに行えるのだ。

そして検体から採血した採血管を人の手によって、採血済みの採血管が検査室に運ばれる。
人の手によって運ばれるということは、何本かまとめて搬送することになるだろう。
しかし、それでは検査結果が遅れてしまいその後に控える人の診断も遅れ、悪循環が生まれてしまう。
遅れを防ぐために佐藤氏は、人の手を借りることなく、搬送はロボットができるようにしたいと考えた。
そして“単純なことはなるべく機械化し行った方がいい”という想いがあった。
その想いがあったから搬送ロボットの開発に踏み切った。

単純作業はロボットで行い、人はやりがいのある仕事を行う

一般的な病院ではスタッフが運び、大きな病院では採血管を運ぶためだけに人を雇うことがある。
しかしスタッフや運ぶだけの人を雇うとしても、終わるたびに一本ずつ持っていくとなると非常に手間であり、反対に何本もまとめて持って行こうとすると検査に遅れが出てしまう。
病院設備として、採血管を採血室から検査室へ運ぶためのベルトコンベアーやエアシューターが設置されていることもあるが、ベルトコンベアーなどの大掛かりの設備は新しく建てる時に設置するものだ。
更に建物内部に取り付けてあるため一度設置したら移動することは不可能である。

そこで人間のように移動することができ、自動で搬送することが可能なロボットを開発しようと思い立ったのだ。
単純な作業を人間ではなくロボットがすることで、“人間には人間にしかできない役に立つ仕事をしてほしい”と佐藤氏は語る。
働き方で職場への貢献の仕方も変わり、単純な作業を無くすことで、人間にとってやりがいのある行動をした方が、仕事というものは楽しくなるだろうと考えた。

佐藤氏はロボットに対して“実用的な物を作る”という意識を持ち、人の代わり働いて役に立つ、ロボットの開発を目指している。
世の中に普及しているロボットは需要があり、人の役に立てる実用的な物を作るため、佐藤氏は現場を自分の目で見ることを大切にしている。
百聞一見に如かずという諺があるように、実際に見なければ思いつかないことも多い。
実際に使われる現場を見て、そこで必要なものは何なのかを考え、絞り込み、開発するという方法を取っている。
その方法を取る理由として、昔から動くものが好きであり、考えることが好きだったからということがある。

起業を後押ししたのは

佐藤氏はヒューマノイド型の人型ロボットではなく、車輪があるような移動型のロボットに興味が惹かれる少年だった。
小学校の頃には友人と共に図書室で、方眼紙に自分は発案した車の設計図を描き、鍵をかけて誰にも邪魔されることがないようにするという徹底ぶりは佐藤氏の真剣さが窺える。

実家が電気屋であったため、幼い頃から電気に触れ、店に置いてある壊れたラジオやテレビを解体し、内蔵されていた真空管などを使用してラジオや送信機を作ったこともあった。
動くものに興味を示していた佐藤氏は技術的なことが好きだったそうだ。
そうして、佐藤氏は東北工業大学電子通信学科に進学した。
しかし音楽にのめり込み、研究室に行くことがないまま卒業し、上京する。
病院のシステム関連や医療機器を取り扱っている企業に技術者として就職し、仙台に配属先が決まり勤めていたが、リーマンショックの影響を受け会社が倒産してしまう。

しかし、佐藤氏は勤めていた会社が倒産する前から独立をしたいという考えがあった。
会社に在籍している時、あと一歩を踏み出すことができなかったが、医療関係の仕事も続けていたいという想いもあり、勤めていた会社の倒産を機に起業を決意して株式会社OLPASOは設立された。

全くの0からスタート

会社を立ち上げ、今回採血管搬送ロボットである“La.puta(ラピュタ)”を開発。
La.putaは“自由にどこにでも行ける”というイメージで付けられた名前だ。
小型のゴミ箱くらいの大きさで、狭いところでも小回りの効くサイズをイメージしていたが、それよりも少し大きくなってしまった為、改良が必要だと話す。

搬送ロボットはすでに大企業が研究・開発しているものの、大きさは約200kgで何千万とするような代物のため、一般的に導入できるような価格ではない。
佐藤氏は大きく高価なロボットではなく小さなロボットであれば、比較的安価に抑えることができると考えた。
そうすれば、導入もしやすいと思い至り、そうして開発されたロボットがLa.putaだ。
La.putaは採血管を運ぶためにロボット上部に取り付けられたRGB-Dカメラを使用し、システムで地図を作成する。
RGB-Dカメラは奥行きも取れるため、より鮮明な地図を作ることが可能だ。
レーザーレンジファインダーといったセンサーよりもカメラは安価で手に入りやすい。
なにより佐藤氏自身、カメラを使いたかったという。
La.putaの内部はROS(Robot Operating System)環境で構築されており、目的地の指定、地図の作成管理、自己位置推定、ナビゲーションなどすべて内部で行われている。

全くの0から開発をスタートしたロボット開発であったため、佐藤氏には当初ロボットを開発する知識はなかった。
社員と共に協力しつつ開発に取り組み、システムは昔の同僚に構築を依頼している。
しかし、自分でもシステムが分からなければ今後どう進めたほうがいいのかも曖昧になってしまうため、佐藤氏はさらにプログラムの勉学に励み、システム構築や新たなプログラムを入れるといった進化していきたいという。
企画が走り出した段階のため、多くの課題もあるが研究を進め採血管搬 送ロボット“La.puta”を様々な方向に発展させていきたいそうだ。

ロボットのエラーを一万分の一にすることを目指す

佐藤氏は搬送ロボットLa.putaを、警護ロボットや見回りロボットに発展させたいという未来のビジョンがある。
介護施設での夜間の見回りロボット、銀行での警備ロボットなどをイメージしており、人間というのは動くものに対して敏感であり、意識することが多い。

動くものに反応する人間に対し、La.putaを使うことにより、老人の深夜徘徊の防止、犯罪者にとっては警備ロボットが常時動いているため、犯罪行為の抑止力にもなる。
なにより職員たちはロボットが見回りしている為、有事があった場合はロボットが知らせてくれる。
見回りをしていた時間は他にもやらなければならない仕事を安心して行うことができるだろう。

そしてロボットが人間に代わって仕事をするために最も重要であることは、エラーを一万分の一に抑え、しっかりと思い通りに動くことだと話す。
走る・動くを目的としているロボットならば90%以上はソフトウェアの世界であり、ソフトウェアが正常に作動しなければロボットは止まってしまう。
病院でLa.putaを使う際も、エラーが頻繁に起こり停止してしまってはロボットを使う意味がなくなるだろう。
止まることなく問題なく動くものを開発し、 La.putaを完全体にすることが現在の目標だと語っている。

さらに佐藤氏は海外に目を向けて企業を展開しているため、代理店も増やしていきたいそうだ。
海外に行きたいと考える人は、大多数の人が観光目的で海外に行くことを考えるのではないだろうか。
しかし、佐藤氏は海外に行くならば観光よりもビジネスで行ったほうが面白いと感じている。
様々な価値観を持つ人と多く出会う機会が増え、語り合うことができるため自分の成長にも繋がるからだ。
今後も企業展開や、ロボット開発、自分の価値観を磨くために、多くの国の人と交流し、自身の見聞を広げていきたいという。

頑張って踏み出す

佐藤氏は「好きなものに熱中することが大切である」と語った。
電気関係の知識やシステム、メカと様々な分野の知識を幅広く持っている。

佐藤氏は様々な分野に精通している知識が自身の強みであり、いいところだと笑った。
この幅広い知識を基に「とことん考えることで、アイデアは降りてくる」そうだ。
どうしても思いつかなければ、また違う視点から物事を考える。
多角的に物事を見て、考え抜くことで自ずとアイデアは生まれるという。

また、開発するのにも技術や知識も必要なため、どのような技術があるのかを調べるための検索能力も必要だ。
携帯やパソコン、iPadなど端末を触ることが多くなった現代社会は情報収集もあっという間にできるが、日本人好みの情報を取得するには難しい。
なぜなら、インターネットは検索エンジンの多くが英語であるため、英語ができる日本人は検索エンジンを利用して、日本人好みの情報を取れるだろう。
情報収集は立派な武器になる。

佐藤氏の考えや想いは、社名の中にも入っているとインタビューをして感じた。
OLPASOというのは佐藤氏が考えた造語であり、スペイン語でOlé(オーレ)は頑張れ、paso(パッソ)は歩く・踏み出す・ステップという意味がある。
頑張って踏み出すという言葉は、佐藤氏が苦しい時も考え抜くことによって新しいアイデアが生まれることと同意義ではないだろうか。
佐藤氏の言葉には、逆境にも負けない力強さがあった。