プロフィール

廣井健人(ひろい けんと)
スケルトニクス株式会社 代表取締役CEO

経歴
2020年9月現在 スケルトニクス株式会社 代表取締役CEO
2018年12月   スケルトニクス株式会社 代表取締役CEO 就任
2018年3月       スケルトニクス株式会社 入社運用責任者 兼 ロボットパイロット
2017年3月       新宿ロボットレストラン 入社 営業部長 兼 広報
2016年2月       アンドロボグループ 入社 アソシエイト

多くのロボットに関わる仕事をしたい!

廣井氏がロボットを好きになったきっかけは、小学校低学年の時に見た「ジュブナイル」という少年たちと正体不明のロボット「テトラ」との絆を描いた映画だった。

廣井氏は、同映画で初めてロボットで感動し、また「テトラみたいな友達がほしい!」と憧れたという。

大人になってからもロボットへの興味は潰えることなく、マーケティングロボットのPR企画やロボット開発者へのインタビュワーなど、ロボットに関わる仕事に携わってきた。

そのような中で入社した新宿のロボットレストランがエンターテイメントとしてのロボットに関わるきっかけだった。

ロボットレストランとは、新宿・歌舞伎町にある、ロボットとショーを組み合わせた一風変わったショーレストランである。
侍や忍者、日本の神話の登場人物をロボット化し、独特のコンテンツを発表している。
日本の文化×ロボットという組み合わせが独自のコンテンツとなり、訪日外国人の方から人気を集めている。

(2021/12/24注意追記:ロボットレストランは2021年4月17日閉館)

廣井氏はそこで営業部長と広報を兼任。
様々な企業にロボットレストランへの出演交渉、実際の出演にいたるまでのフォロー、広報活動を行い、ロボットでのエンターテイメントに携わってきた。

その後、廣井氏は独立を目指し、ロボットレストランを退職したものの、様々な理由から断念。ロボットレストランがきっかけで出会ったスケルトニクス株式会社に運用責任者兼ロボットパイロットとして入社した。
現在は同社の代表取締役CEOとして、社名と同名のロボット、「スケルトニクス」の研究開発に力を入れている。


スケルトニクスプロモーションビデオ

人は優秀 だからこそ「人ありき」

スケルトニクス株式会社の掲げるビジョンに

〔身体機能の拡張によって「進化した人類」を創造〕

という一文がある。

この言葉の通り、スケルトニクスは人が搭乗し、動かすことによって人の動作を拡大する「人ありき」のロボットである。

廣井氏は「人ありき」についてこう語った。

「人ってすごく優秀なんです。たとえば、腕を波打たせるようなうねうねとした動き。
これは、骨・筋肉が組み合わされる複雑な動きですが、人ならいとも簡単にできてしまいます。これがロボットとなるとそうはいかない。非常に複雑な制御が必要となります。

人はすごい。

だからこそ僕は人の力を活かしていきたいんです」

全自動のロボットではなく、人と動くロボットの開発を目指す廣井氏。

廣井氏とスケルトニクスとの付き合いはロボットレストラン時代からだが、入社後、パイロットとして初めてスケルトニクスに搭乗した際はとても感動したという。

廣井氏「スケルトニクスに出会うまで、僕が触れてきたロボットは全てモーターありきのロボットでした。でも、スケルトニクスはモーターを使用していない。そして装着できる。ロボットを装着できる……文字通り“自分で動かすことができるロボット“にとても感動しました」

エンターテイメント界で数多くのロボットに関わってきた廣井氏。
そんな廣井氏が感動したスケルトニクスとは一体どのようなロボットなのだろうか。

「進化した人類による世界」を演出する

スケルトニクスは人の動きを拡張する動作拡大型デバイス(外骨格ロボット)である。
人が搭乗し、動くことで、その動作を拡大して動く。


スケルトニクス搭乗過程

スケルトニクスが体現するのは、「進化した人類による世界」である。
この世界観について、廣井氏はこう語った。

「例えば、スケルトニクスが1台だけで公園を歩いているところを想像してください。
傍から見たら、“なんか珍しいものが歩いてるぞ”という感じですよね。
でも、それが2台だったらどうでしょう。

一気に“ロボットのある世界”に見えてきませんか。

しかもそのロボットは人が“装着”して動かしているんですよ。」


スケルトニクスが並んで動作する様子

たしかに、人の動きを拡張させつつも、スマートなスケルトニクスが日常のなかを並んで歩く様子はまさに「未来」を感じさせる。
この「未来感」ゆえか、スケルトニクスはこれまでエンターテイメントロボットとして、「逃走中(フジテレビ)」や「スゴ動画超人グランプリ(日本テレビ)」、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!(日本テレビ)」などのテレビ番組や、イベント、博物館などに登場してきた。

また、特注の外装も受け付けており、国内外のイベントや紅白歌合戦などで披露している。

かっこいい!でも重い…

様々なエンターテイメントの場で活躍しており、完成形かと思われるスケルトニクス。
だが、廣井氏は更なる改良を目指しているという。

それは軽量化である。

スケルトニクスの重量は約40kg。
片手・片足、各5㎏ほどで、計40kgである。
この「重さ」がスケルトニクスの課題である。

スケルトニクスにはモーターは使われておらず、全て搭乗者の力で操縦するため、操縦者の筋力が必要になってくる。
人間の体の構造と同様にスケルトニクスにも背骨があり、全体を支えているため、搭乗してみると重さはそこまで感じないが、やはりある程度は重みがあるので、操縦者の習熟が必要になってしまう。
また、重さがあると操縦の際の安全面への配慮の問題も大きくなる。
運搬の場面でも、労力がかかり、行ける場所、接触できる企業が限られてきてしまうのである。
そのため、スケルトニクスを一般化する、活動の範囲を広げるためには「重さ」が課題となる。

この課題を解決するために、廣井氏はスケルトニクスの軽量化に取り組んでいる。
素材の変更、上半身の改良で軽量化を目指しているという。

廣井氏「素材を変えることで、今のスケルトニクスの半分の重さにしたいと思っています。
また、素材だけでなく、上半身も改良していきます。
下半身は全体の負荷がかかるところなので、下半身だけの軽量化というのはどうしても難しいですが、上半身は指の先端の方など軽量化できる部分があります。
そういったところを改良し、軽量化していく予定です」

足枷であった「重さ」を解決することで、一般への普及を目指す廣井氏。
廣井氏は「一般化」でどのような未来を描いているのだろうか。

エンターテイメントをもっと面白く!

廣井氏「僕の夢は、スケルトニクスでサッカーの試合をすること!サッカーが好きなので(笑)

サッカー以外でもいろいろなスポーツにスケルトニクスを登場させたいです」

スポーツという興奮するエンターテイメントにロボットというエンターテイメントを掛け合わせることを夢見る廣井氏。

その前身として、2019年にロボットスーツを装着した新感覚スポーツ「RFIGHT」を発表した。

RFIGHT イメージ写真

RFIGHTとはロボットスーツを装着し、パイロットになることで戦うことができる新感覚スポーツ。「1vs1」でロボットスーツを着た相手パイロットと戦う、いわばロボットでのボクシングである。
このロボットスーツは、スケルトニクスの約半分の重さ(外装を除く)で、装着の難易度軽減にもこだわった。
つまり、誰でもつけられるように手軽さ、安全性、見た目や驚きを追求したのである。

廣井氏は、今後も自身の研究を進めるとともに、スケルトニクスが他のロボット開発のきっかけになってほしいと語った。

「コロナの影響でロボットの需要は確実に上がっています。
けど、僕はその中で新しいロボットの開発をするというよりは、スケルトニクスが他のロボット開発のきっかけになってほしいと思っている。

僕自身はスケルトニクスを応用して、リモコンで遠隔操作できるロボットを開発して、もっとエンターテイメントを盛り上げていければいいですね」

今後もエンターテイメント界でスケルトニクスの研究を深めていくという廣井氏。

長らくエンターテイメント界でロボットに関わってきた氏が、今後どのような発想でスケルトニクスを活躍させていくのか。

日常に「進化した人類がいる」世界がくるのが楽しみである。