【ドック×ロボット】人の役に立つ工学“センシングと動きで人をHAPPYに!”

プロフィール

大野和則
東北大学 未来科学技術共同研究センター
准教授 博士(工学)

略歴
■1995年4月〜2004年3月 筑波大学
「自律移動ロボットの屋外ナビゲーション」
 工学研究科卒業 博士(工学)の学位取得

■2004年4月~2005年3月 神戸大学COE研究員
「レスキューロボット」
 神戸大学自然学研究科
 安全と共生のための都市空間デザイン戦略

■2005年4月~ 東北大学 助教、講師、准教授
「自律移動ロボットの知能」
「レスキューロボット」

新しいロボットのカタチ“サイバー救助犬

近年、従来型の機器で造られたロボットから、生物と機器を融合させたロボットなど、様々なカタチのロボットが生み出されている。
今回、紹介する”サイバー救助犬”は、全てを機器で造るのでなく、動物本来の能力を活かし、機器を装着させるという、新しいカタチのロボットだ。

“サイバー救助犬”のミッションは、災害時に被災した人々を探し出すこと。
現在、災害現場で活用するレスキューロボットには、クローラー型や蛇型など様々なタイプがあるが、被災地など広範囲のエリアでの捜索になれば、その分電力が必要となるため長時間稼働ができない。
電源ケーブルの長さの問題もあり、被災者を見つけ出すことに向いていないのだ。

ある日、大野氏は消防隊の方からこんな話を聞いた。
「人間が飲まず食わずで、生き延びられる限界が72時間と言われています。
大規模災害が起こった際、私たちは救助に向かいますが、どこに被災者がいるのか見当もつかないため、捜索が難航してリミットの72時間があっという間に過ぎてしまう。
もし、ロボットが被災者のいる場所に当たりさえつけてくれれば、今よりも多くの人を助け出すことができるのです。」

大野氏は東日本大震災で福島原発の調査で活躍した、クローラーロボット“クインス”の研究開発プロジェクトメンバーでもあったため、今度はこの問題を解決したいと動き始める。

当初、今まで研究してきたクローラーロボットにカメラや赤外線等の機器を搭載し、その映像から被災者を見つけようと考えていたが、72時間という短い時間で被災者を見つけ出すには課題が山積していた。
一番の課題は、被災地では倒壊した建物や瓦礫が散乱しており、映像だけで捜索する事には限界があった。
他の方法で被災者を見つけ出すことは出来ないか?と考え、様々な情報を集めてみると、災害現場などで人を見つけ出す救助犬の嗅覚が凄いということを知る。

犬の嗅覚を参考にして、嗅覚センサーを開発してみようと調査を進めていくうちに、犬の嗅覚は感度だけではなく、嗅ぎ分ける能力があることが分かった。

ロボットを全て機器で造ることよりも、大切なこと

今ある嗅覚センサーは人間と動物の匂いの違いは判別できず、アンモニアなど特定の臭い物質を測定するセンサーが主流である。
特定の臭いの物質に対して高感度なセンサーを作ることは可能だが、犬の嗅覚のように嗅ぎ分けるとなると、途端に難しくなる。
例えば被災地で、瓦礫の中に人がいた場合、嗅覚センサーでは人か、人以外の匂いなのかの判断が付きにくい。
調査で現状の嗅覚センサーの限界を知ったことにより、機器に固執せず、犬の能力を活用することを思いついた。

犬を活用するメリットはその他にもある。
現在あるレスキューロボットの最大の課題は、バッテリー使用による稼働時間の短さと、電源ケーブルを付けた際の活動範囲の制約である。
だが、生きている動物を活用すれば、電力は必要なく、電源ケーブルも不要だ。
餌は必要であるが、ロボットよりも長時間かつ、広範囲で活動することができる。
“サイバー救助犬“は動物本来の能力を活かし、機器を装着させるという、新しいカタチのロボットだ。

また、レスキューロボットの場合、日本では高度に自律化されたロボット技術には輸出制限がかかるため、海外で災害が起きた時に多くのレスキューロボットは持って行くことができない。
しかし、“サイバー救助犬“であれば、被災地につれて行くことができるし、装置のみを持って行き、犬を現地で調達することもできる。
装置も簡単にメンテナンスができ、現地の人に犬の育成ノウハウを伝授することで、活用することが可能となる。
大野氏は本当に役に立てるレスキューロボットを目指し、研究は今も続いている。

世界初!犬のやる気が分かる?サイバースーツ

これまで、救助犬が被災者に繋がる匂いを嗅いでいるのか、嗅いでいるフリをしているのか分からなかった。

そこで、救助犬のやる気を知るために、麻布大学の菊水 健史教授と共同で犬の情動を推定するサイバースーツの研究開発が始動する。
そして、開発したサイバースーツで、救助犬の心電と運動を測定した情報を元に、救助犬の活動中の情動の活性度をリアルタイムに推定し表示することに世界で初めて成功した。

今後、救助犬のやる気が分かることで、効果的な被災者の捜索が可能となり、多くの人命を救助することに繋がると期待されている。

しかし、現在の日本では救助犬の活用はまだまだ発展途上だ。
西欧ではすでに救助犬を山岳救助や災害救助に利用している国もあるが、日本では国からの救助犬育成への支援はなく、非営利団体などがボランティアで育成を行っている。

これから大野氏は“サイバー救助犬”の活動を通して、救助犬の優秀さをアピールし、被災地や山岳救助で、救助犬が活躍できる社会を実現したいとのこと。
将来はペット産業での活躍や、鳥獣被害解決にも活用していきたいと語っている。

最後に「いつ起こるかわからない災害や事故にあった時のために、備えていれば自分の助かる確率も上がるからね」と、大野氏は笑いながら話してくれた。

“センシングと動きで人をハッピーにする”原点

幼い頃から妄想と物作りが好きだった大野氏は、双子の弟とブロックでよく遊んでいた。
高校生では、映画“バック・トゥー・ザ・フューチャー”に出てくるスケートボードを見て「どうやったらつくれるのだろう」と考え、想像することが大好きな少年だった。

ロボットとの出会いは筑波大学の学生時代。
大学ではロボットの研究をしている人が多く“ロボットスーツHAL”の開発者で知られる山海嘉之氏や、筑波大学名誉教授の油田信一氏らに懇意してもらったことで、彼らの行っている研究や授業を通して、ロボット作りの面白さを実感する。

大野氏が大切にしている「センシングと動きで人をハッピーにするアプリケーションであればなんでもやる」という想いの原点である、モノづくりの楽しさを教えてくれたのも彼らだった。
ちなみに“センシングと動きで人をハッピーにする”とは、分かりやすく例えると「人を幸せにするロボットシステム(狭義)」である。

大学時代は、自動運転の原型となる車輪型移動ロボットの研究に没頭した。
当時、屋外を自動で動くロボットの研究をしていたため、許可を取らず、実験を行っていいかもわからないまま大学の敷地内で、勝手にいろんな場所で実験を行っていたという。
実験中、ロボットの周りでは自転車が走っていたため、よく事故が起こらなかったなと、当時のことを振り返り笑いながら話してくれた。

しかし、その時代日本では自動運転は流行らないという風潮があり、その後レスキューロボットへ研究を移行。
2004年に神戸大学でレスキューロボットの世界的な権威である田所論教授の活動に賛同し、研究室のメンバーとなり、2005年に東北大学へ移り「クインス」の研究開発に取り組み、現在に至る。

夢は“実世界検索エンジン

大野氏の夢は検索エンジンの実世界版だ。
それは、世の中で電子化されていない情報を、ロボットが自動で集めてつくる実世界版のリアル検索エンジン。

将来ロボット技術がいろんな場所で当たり前の様に使われた時、現在のインターネットの検索エンジンのように、実世界にある電子化されていない情報が自動で集まってくる検索エンジンを目指している。

例えば、日本で現在問題となっているインフラの老朽化では、危険な状態のインフラが身近に潜んでおり、その現場へ検査が出来る人が行かなければ把握することすらできない。
しかも、日本では人手不足も深刻なため、全ての検査を行う事ができず、大きな災害が引き起こる可能性がある。

将来“実世界検索エンジン”が世の中に普及し、様々な場所を自律したロボットが飛び交い、自動で情報を収集できるようになれば、その情報を元に対策を打つことで、危険を未然に防ぐことができる。
圧倒的に働く人が足りなくなる日本では、この”実世界検索エンジン”が必要になる。
“実世界検索エンジン”で世の中の困りごとを解消し、もっと世の中がいい方向に回るようにしたい。
そして、ロボット屋さんがロボットを作るだけでなく、活用、活躍できる場も作りたいと大野氏は語る。

「実現できたら自分自身も知らない事物を発見でき、研究者として知識の探究心が満たされる楽しみがある。
歳を取っても探究心だけは変わらないからね。」と話してくれた。

ロボット研究開発者を目指すなら“ピンチはチャンス”と捉える

ロボットは自分の手を動かし、実際に動かすことができる数少ない分野です。
みなさんには、モノを作って動かすという楽しみを、是非発見して欲しい。
最初は難しそうだなと感じても、やってみると以外と簡単な仕組みで動いているので、
諦めずにチャレンジして欲しい。

今回、お話した“サイバー救助犬”の一号機では、救助犬がサイバースーツを嫌がり5分も装着してくれず、全く実験にならないとうピンチが訪れました。

解決するために救助犬が楽に装着してくれるよう改良を図り、その過程で何度もピンチが訪れました。
その度に、生地を軽くしたり、使う部品も排除したり、デザインを一新させたり、犬のやる気を推定したりすることで乗り越え、性能を維持させながら軽量化を実現することができました。

今では、日本救助犬協会の現場で活躍するトップ犬に付けさせてもらえるようなり、苦労の後にはいいことがあると改めて実感しています。

私はこれまで”ピンチはチャンス”の精神で、様々な課題を乗り越えてきました。
このピンチを乗り越えたら、次のレベルに行けると思って挑戦し続けてきました。
時には失敗し、数打っても当たらない時もありますが、何もせずに失敗するよりは、手を打って失敗する方がいい。

なぜなら、本気で挑戦して失敗することで、自分の能力で足りなかった部分が分かり、更に成長できるから。
今でも、ピンチはチャンスと心を奮い立たせ、挑戦しています。

「是非、みなさんも”ピンチな時こそチャンス”だと思い、失敗を恐れずにチャレンジしてほしい」

大野氏のピンチを乗り越えればレベルアップにつながり、諦めずに行えば楽しさを知れるという考えをお聞きし、全ての事に共通する考えだと感じた。

詳しくはこちら>>>東北大学未来科学技術共同研究センター
詳しくはこちら>>>サイバー救助犬

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紹介 さくまみさき

楽しく、驚く記事であり、製作者の言葉が、一人でも多くの人の頭の片隅に残るような記事を書いていきます。

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