【共育&ロボット】アイデアをカタチにするエネルギー

プロフィール


熊谷 正朗
東北学院大学 工学部 機械知能工学科
教授

主な受賞歴
2006年度 – 計測自動制御学会 研究奨励賞
2010年度 – IEEE「Top 20 Robot Videos of 2010」No.1
2016年度 – 日本機械学会「日本機械学会教育賞」
学位論文
『人型2脚ロボットの時変傾斜面への適応に関する研究』 東北大学

ロボットクリエイターになりたい?それなら『 つくれる力を持て! 』

つくれる力には2つある。
ロボットを実体化させるための「つくる力」
あるいは「つくってもらえる力」と語るのは、自称メカトロ技術屋の熊谷氏。

「やりたい事」×「制限」が人の力を伸ばす!

日本のロボット研究者達は、アトム世代とガンダム世代の2世代あるという。
アトム世代は人工知能が搭載された完全自律型ロボットを見て育ち、
ガンダム世代は搭乗操作型ロボットを見て育った。
日本の研究者たちはガンダム世代が多く、ロボットは完全自律が要求されない乗り物、道具になっている。
余談だが、マジンガーZ世代も研究者達の中に少数いるらしい。

ガンダム世代の熊谷氏は幼少期、紙とセロハンテープがあれば、ひたすら様々なものを作る工作少年だった。
工作を作りすぎて、とうとう親からセロハンテープを一月一本までと、制限されるほどのめり込んでいた。

熊谷少年はセロハンテープの使用量を制限されたが、消費をなるべく抑え、かつ多くのものを作るために、セロハンテープを半分に割いて使うなど創意工夫をしていたという。

こうして、幼少期にリソース管理を無意識ながら覚えていたことに後で気付き、
「制限があったほうが力は伸びる」と考えるようになる。

小学生になると、少ないお小遣いでギアボックスやモーターを購入して動くモノの工作や、トランジスタラジオで電子工作を始めるなど順調に、そして無意識にロボット開発者への道を歩んでいく。

6年生の時には、自宅にパソコンが届き、ゲームにも熱中したが、やがて父親からの制限発動。
それは、「ゲーム禁止令」子どもにとっては過酷なものだ。
ゲームを禁止され、残されたパソコン。
パソコンを使うとなると、プログラミングをするしかなかった。
しかし、熊谷氏はそこでプログラミングの楽しさを知ることとなる。
中学時代には学校で習った素数を算出するプログラムの開発を通してアルゴリズムの重要さを体感し、高校になるとC言語の素晴らしさに感動する程、プログラミングにのめり込んだ。

しかし、またもや父親からの制限が。
大学に行ったら好きな事ができるようになるから、今は我慢して勉強しなさいと言われる。
熊谷氏は開発趣味を我慢して勉強をし、東北大学の工学部に合格。
大学に入学したものの、何を学びたいか決まっていなかった熊谷氏だったが、機械工学を選択する。
その理由は、子供の頃から趣味でやっていた電子工作、ソフト開発、それらを活かせることが機械工学だったからだ。
その後も、ネットワーク分散処理、二脚歩行ロボットなど様々な研究開発の経験を積む。
その選択が、現在のロボット開発工学に繋がってくる。

大学に入って好きなものが作れると思ったのも束の間、父親から大学院に行くまでは勉強しなさいと、またもや制限が発動。
この制限は長く続いたが、結果的に現職に就いて研究室持ちになってからは、好きなものが自由に作れるようになった。
熊谷氏は言う、今好きなものを作れているのは、両親の制限教育の賜物だと。
リソース制限によって力は伸びたし、工作開発一辺倒にはせずに学校の勉強をしっかり行ったことで理論的な裏付けなどを得てものづくりの実現性が向上したと。

ロボットづくりを通して生徒と共に成長

お話してきたように、制限だらけの学生時代を送ってきた熊谷氏だが、現在は東北学院大学の機械工学の教授として学生を指導している。
熊谷氏の研究室では、学生がロボットのアイデアを持ち寄り、そのアイデアが面白そう、できそうだと熊谷氏が判断した場合、製作・開発に入るというスタイルを取っている。
学生のアイデアをカタチにするためには、新しい技術の開拓が必要となり、その技術課題を解決することが、熊谷氏自身の力にも繋がっている。

熊谷氏の研究室の開発の進め方は面白く、コンセプトを考えるのは学生であり、技術教育とサポートを熊谷氏が担う。
そのため学生達は、自分達がやりたいことを実現するため、主体的に責任を持って開発することで、何か一つ「つくってみた」という経験に繋がる。

熊谷氏にとって、工学教育の目的の一つは、「見たことも聞いたこともない」を「見たことや聞いたことはある」にする。
さらに「やってみたこともある」にすることで、今後の仕事などで自分自身の手でつくらなければならなくなったときに、その心理的負担を下げることだと語る。

ロボット開発工学で誰もがロボットをつくれる世界に

熊谷氏の研究室の正式名称は、ロボット開発工学研究室である。
なぜ、ロボット工学ではなく、ロボット開発工学なのか。
設立当初は「理論には弱く、ロボット工学を名乗るのはおこがましいけど、つくることなら大丈夫」という想いで「開発」の字をいれたらしいが、いつのまにか、その名前が実際の方向性を決めはじめた。

熊谷氏の現在の目標はロボットの作り方をシステマチックに示すこと。
それは、ロボットを作りたいときに、どういった方法でどういう手段をとればいいのか、その方法論をまとめることである。

現在、研究室では様々なタイプのロボットを短納期で作り、アイデアを高い確率で形にしている。
その結果、ロボットづくりの必勝パターンが見つかり、特殊なノウハウを蓄積することが出来た。
その必勝パターンや特殊なノウハウをまとめて、開示することを目指している。

今、様々なロボットを作ることが出来るロボット開発工学を実体化したいと考えているが、書籍では全てを細かく書くとなると辞典のようになってしまう。
そのため、WEBや動画の方が向いているのではないかと考え、構想を練っている。

自分が必要だと思ったものは、誰かも必要としているという思いで、その計画を着々と進めている。

玉乗りロボットの性能を向上させた「手抜きの偶然」

玉乗りロボットとは、その名の通り玉に乗り、3つの車輪でバランスを取るロボットだ。
ちなみに、この玉乗りロボットの技術は村田製作所のバランスをとるロボットにも使用されており、熊谷研究室の方式が元となっている。

始まりは、学生が「玉に乗って転がしてもバランスをとるロボットを作りたい」という発想から生まれた。

開発するにあたり、熊谷氏はバランスをとるということ自体なんら不安はなかったが、
トントン拍子に開発が進み、すっと立ち、音がなく、揺れもないロボットが誕生したことに驚いた。さらに、上に物を載せてもバランスを崩さない。

なぜこんなに性能がいいのか?

その理由を調べると、玉乗りロボットに使われたのは、一般的には倒立振子のロボットには使われることがない、ステッピングモーターにあった。
倒立振子はこれまでの理論から「力」や「トルク」で制御することが一般的。
そのために使われることの多い直流モータを使うと減速機が必要となるので、メカ設計が面倒になると、「手抜き」のために直結できるステッピングモータを使った。

このモータは「力・トルク」の調整はできないが、力学の式だとおおざっぱには「力」と「加速度」は比例するので、「加速度」で制御すればいいかと。
その結果、直結したことでメカのガタがなく動きがスムーズになり、加速度を使ったことで質量変化の影響を受けにくいという性質が出たらしい。

「手抜き」から偶然出てきた成果であるが、既存の方法にとらわれずに、実現性のために少しずれた方法を採用したからこそ見つかったとも言える。
今後は、玉乗りロボットが私たちの生活に少しでも役立てばと、企業とのコラボレーションも積極的にしていきたいと熊谷氏は話す。

想像を実体化できる力を持て

熊谷氏より、これからロボット開発者を目指す方へメッセージをいただいた。

ロボット開発者を目指す皆さんには「つくれる力を持て!」とお伝えしたい。
開発者になるためには、夢やイラストで終わらせるのでではなく、実体化する力が必要です。

実体化させるために「つくる」、「つくってもらう」は、どちらの方法でもよい。
大切なのは、世の中にある実装技術を知ることで、つくれるかどうかを判断できること。
今の技術では空を飛んで合体変形するような人型ロボットを、所望してはいけません。
そのためには、幅広く、ものに関わる雑学を身に付け、技術を組み合わせ可能性を広げる。

「つくれる力を持って」
そして、
「クリエイトするという部分・アイデアの部分は自分でなんとかしてください」

最後に、工学という捉え方の根底には「科学技術で人が幸せになるようにする」というという哲学ある。
「幸せになる」というのは、直接的な利益でも、それをみて笑ってくれても、「おお〜、すげ~」という感じでもいい。
根底に、そういう想いを持って、ものづくりをすることを忘れないで欲しい。
人に役に立つということは、人がなんぼかでも、幸せになればそれで良いということ。

「革新的な技術で人を動かすより、誰か一人でもいいから幸せになれば満足」

その言葉をお聞きし、幼少期から両親より受け継ぎ、熊谷氏が現在に至るまで、無意識に掲げてきた志だと感じた。

熊谷研究室の「ロボット・メカトロニクス講義ノート」WEBサイト
詳しくはコチラ→http://www.mech.tohoku-gakuin.ac.jp/rde/

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紹介 さくまみさき

楽しく、驚く記事であり、製作者の言葉が、一人でも多くの人の頭の片隅に残るような記事を書いていきます。

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