【ヒューマノイド&ロボット】ロボットに第二の人生を賭ける男

【プロフィール】
伊藤 博之(Ito Hiroyuki)氏
役職:ロボットエンジニア

intel 主催IoT ハッカソン2015東京大会チャンピオン
HP : http://www.mannequinrobot.com/

【元:山一証券マン。第二の人生をロボットに賭ける男】


伊藤氏は、幼い頃から電気・機械が大好きな子だった。
幼稚園の時すでに電気工学の本を絵本代わりに読み、オームの法則などを学習。
家中のラジオやステレオを分解しては親に叱られていた。
それもそのはず、伊藤氏の母方の先祖は
エレキテルの“平賀源内”と同じ平賀家の血筋。まさにDNAのなせる業。

少年期はラジコン飛行機(現在でいうドローン)やラジコンカーを作り出す。
ただ作るだけでは飽き足らず、メーカー主催のラジコンカーレースにも出場するこだわりぶり。
負ければ悔しくて徹底的に車両を改造しては再チャレンジした・・・

大学は成蹊大学工学部に進学し情報処理を専攻。
おもちゃは当時のスーパーコンピューターに代わる。
PrologやLISPで初期の人工知能を開発し、プログラマとしての道を歩み出す。

大学卒業後は金融エンジニアに魅力を感じて山一證券に入社。
香港、ドイツ、スイス、中近東を飛び回る国際ビジネスマンとなった。
英会話も覚えてロンドン駐在員に抜擢され、エリート証券マンとして夢の生活を手に入れた。
しかし間もなくバブル崩壊で山一證券は破たん・・・

その後日本アイ・ビー・エム、みずほ、E&Yなど銀行、
外資系企業を何社も渡り歩き、ニューヨークに武者修行に行くなど腕を磨いた。
終身雇用の大企業を放り出された自分が頼れるのは、“己のスキル”のみとなった。

ロボット開発を始めるきっかけは、2015年に偶然観たテレビ番組だった。
米国のロボットコンテストのドキュメンタリーだったが、
そこでは日本チームが惨敗し、韓国チームが優勝していた。
「何をやっているんだ。このままでは日本は危ない!」伊藤氏はショックを受けた。

と同時に何かが伊藤氏の意識に降りてきた。
「自分でやってみろ!」神のお告げのようだったという。
「そうだな、自分ならもっとすごいロボットが作れるかもしれない。」
さっそく市販のプログラミングロボットを購入し、分解し始める。
子供の時にラジオをワクワクしながら分解する時と同じ原点(童心)に帰っていたという。

それからわずか4カ月。自作のロボットをインテル主催のIoTハッカソン東京大会2015に出品。
アジア諸国からのエンジニア総勢120名のエントリーの中から見事“優勝”を勝ち取った。
「日本人がロボットで優勝出来た!」この経験で自信をつけた伊藤氏は、
これからの人生をロボットに賭けようと決めた。

【もうSFではなくなったヒューマノイド】


ヒューマノイド(humanoid)「人間そっくりの」「人間によく似た」という形容詞で、
名詞としては人間に似た生物や人型ロボットを指す言葉である。

伊藤氏が目指すのは、単なる姿形が人間に似ているロボットではなく、
人間と心のつながりを持つようなロボット。まさにSF映画の世界を実現することだ。

イギリスの映画に、ヒューマノイドと人間が恋に落ちるという作品があった。
主人公の若い男性が、社内コンテストで優勝したご褒美に社長の別荘に招待された。
そこで待っていたのは、世界初の実用レベルとなる
人工知能を搭載された美しい女性型ヒューマノイドだった。
数日そこで過ごすうちに、ロボットとの純愛が芽生えていった。(はずだった)
しかし真実は・・・というストーリー。

“ロボットが自我を持ち、その上人間と恋に落ちる?“
「いくら人工知能の研究が進んできたとはいえ、まだやはりSFの話では?」と聞くと
「いや、目指すのはそのレベルなんです。」と真顔で伊藤氏は言う。

理想は高い。これを達成するためには、まずロボットに「性格」を持たせる必要がある。
自身がIT業界で研究した映像処理、音声関係、WEBサービスの技術を投入。
さらに「心の人工知能」については国立大学院の教授とも共同研究に着手している。

伊藤氏は、自身が製作したロボットそれぞれに名前はもちろん、
「職業」と「経歴」を持たせている。

例えば、シェフ・ロボットの利子(としこ)さん。
大人しそうな〈彼女〉の前職は銀行員で投資相談を担当していたが、
転職してシェフになったという。
名前の「利子」も「利子(りし)」が由来なのだとか。

他にコンパニオンロボットのA.I(愛)ちゃん、
医療現場で働くナースロボットのErena(エレナ)のプロトタイプもあり、
既に多くのビジネスコンテストに持ち込み、ビジネス展開も考えているという。

【2020年もうひとつのオリンピック】


2020年の東京オリンピック開催と共に、
「ロボットオリンピック」の開催も政府により企画されている。

伊藤氏の今の目標は、このロボットオリンピックへの出場と、
同時に東京オリンピック会場で自身が創ったロボットを働かせることだという。
「そのロボットが日本の誇るロボットとして世界に紹介されたら」と密かな野望も持っているようだ。

日本国内でもロボットや人工知能ビジネスに大企業が参入するようになってきた。
その中、「個人」で活動する伊藤氏には設備や資金などハンディがあるはずだ。

ロボットを製造するとなると通常、設計、金型製作などの初期段階だけで、
投資が莫大な金額になってしまう。

しかし、伊藤氏はそんなことは気にかけていない。
イメージしているのは、米国電気自動車メーカーのテスラモーターズだという。
創立者のイーロン・マスクはIT出身。既製品ボディと民生品バッテリーで電気自動車を作り、
見事に世に出してみせた。

伊藤氏もボディは汎用マネキンを使い、
部品も民生品(一般家庭での使用が想定された製品)の為、
新規の専用部品開発が不要になる。

IT出身の伊藤氏だからこそ「自由で柔軟性に富む発想」で
「ローコストで個人でも買える価格のロボット」が実現出来るのだ。

その姿勢に協賛する国内ベンチャー支援グループや、
世界的ソフトウェアベンダーも既にあるという。

【実現可能な夢に向けて】


世界規模で盛り上がりを見せ始めているロボットビジネス。
「今から着手していれば、
日本を代表するロボットエンジニアの一人になれるかも知れない」と伊藤氏は笑った。

日本政府もロボット工学への大規模投資を約束しており、
その援助を受けての研究、開発も盛んになっている。
伊藤氏は若い世代のロボットエンジニア育成にも貢献していきたい。と話す。

数年後には小学校でのプログラミング実習も必修化する。
これから先、自分でもロボットを創りたいという若者は増えていくだろう。
それはつまり、ライバルが増える事でもある。

けれど、そういった若者はもちろん、他の企業や団体に負けずに前進していく。
そんな想いや向上心を持っているからこそ、伊藤氏はこの先も第一線を走り続けていく。

伊藤氏が創ったロボットをアナタが目にする日はそう遠くない。

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紹介 廣井 健人(ひろい けんと)

ロボットの『当たり前化』を実現させたい。 数年前、スマホは真新しいものでしたが、今ではあって当たり前になっています。 ロボットもスマホのように、身近にあって当たり前になるように、 ロボットを開発している方々と協力し合って、ロボット利活用社会を創っていきたい。

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